不動産売却時の譲渡所得の特別控除とは?要件や必要書類を解説

家を売って利益が出た場合、どのくらい税金がかかるか不安になる人もいるでしょう。自分が住んでいた家を売って得た利益には、「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」(3,000万円控除の特例)により、3,000万円までは税金がかかりません。

この記事では、3,000万円控除の概要や適用要件、他の控除との併用、手続きについて詳しく解説します。自宅の売却を検討中の人は、ぜひ参考にしてください。

目次

譲渡所得の特別控除とは

譲渡所得の特別控除とは、不動産のような資産を売却して得た利益に対する税の負担を軽減する仕組みです。譲渡所得の特別控除を利用できると、不動産の売却益などにかかる税金を抑える効果を期待できます。

土地や不動産に適用される譲渡所得の特別控除の種類

土地や建物を売ったときの譲渡所得から特例として受けられる特別控除には、以下の7種類があります。

譲渡所得の特別控除の種類
  • 公共事業のための譲渡:5,000万円
  • マイホーム(居住用財産)の譲渡:3,000万円
  • 特定土地区画整理事業のための譲渡:2,000万円
  • 特定住宅地造成事業のための譲渡:1,500万円
  • 平成21年・22年取得土地の譲渡:1,000万円
  • 農地保有の合理化のための譲渡:800万円
  • 低未利用土地等の譲渡:100万円

特別控除の年間上限額は、譲渡所得全体を通じて5,000万円までです。また、複数の特別控除が適用可能な場合は、上記の番号順に控除が適用されます。

土地や不動産以外の適用される譲渡所得の特別控除の種類

土地や不動産以外の資産に適用される譲渡所得の特別控除は、一律50万円の特別控除のみです。対象となる主な資産は、以下のとおりです。

  • 株式
  • 金地金
  • 宝石
  • 書画・骨とう
  • 船舶
  • 借家権
  • ゴルフ会員権

譲渡所得は対象となる資産の所有期間によって短期譲渡所得と長期譲渡所得に分かれ、所得金額の計算方法が異なります。

所有期間計算方法
5年以下(短期)譲渡益から50万円を全額控除
5年超(長期)譲渡益から50万円を控除後の1/2が所得金額

不動産売却時の譲渡所得の特別控除「3,000万円控除」とは

3,000万円控除はマイホーム(居住用財産)を売却した際に適用できる税制優遇制度で、譲渡所得から最大3,000万円を控除できます。自宅を売却する際の税負担を軽くする重要な特例なので、しっかり理解しましょう。

3,000万円控除の適用要件

3,000万円控除の適用を受けるには、以下の要件を満たす必要があります。

  • 現在住んでいる、または住んでいた自宅であること
  • 住まなくなった日から3年目の12月31日までに売却すること
  • 売主と買主が親族や夫婦など特別な関係でないこと
  • 売却の前年および前々年に3,000万円控除を受けていないこと
  • 売却年、前年、前々年にマイホームの買換えや交換の特例を受けていないこと

3,000万円控除は建物解体後の土地の売却でも、上記の要件に加えて以下の条件を満たすと適用されます。

  • 建物解体から1年以内に売却契約を締結すること
  • 解体から売却までの間、駐車場などとして貸し付けていないこと

また、店舗併用住宅を売ったときも居住部分は控除対象となり、建物の90%以上を居住用として使用していた場合は全体が対象となります。

以下の不動産の売却益は、3,000万円控除の対象外となります。

  • 控除目的のみで購入した不動産
  • 自宅建築までの一時的な住まいとして入居した不動産
  • 別荘や趣味を目的とした不動産

3,000万円控除を申請する際の注意点

3,000万円控除は自宅を売って利益が出た際には活用したい特例ですが、以下のような注意点もあります。

  • 併用はできない特例や控除がある
  • 10年超所有軽減税率の特例とは併用が可能

併用できない特例や控除がある

不動産の税制優遇には3,000万円控除以外の特例や、控除があります。その中には3,000万円控除と併用できないものもあるため、注意が必要です。

住宅ローン控除

住宅ローン控除とは、住宅ローンを利用して家を購入した人が受けられる税の優遇制度です。毎年末の住宅ローン残高に応じて、一定額が所得税や住民税から控除されます。

3,000万円控除の適用を受けると、その前後2年間は住宅ローン控除を利用できません。つまり、自宅を売却して3,000万円控除を利用した場合、その前後2年間に購入した住宅では住宅ローン控除を受けられないわけです。

したがって、自宅を売ってすぐに買い換える場合は、どちらの制度を使ったほうが有利かを慎重に検討する必要があります。

選択の目安として、譲渡益が大きい場合は3,000万円控除が有利といえます。譲渡益が少額の場合や住宅ローンの借入額が高額の場合、住宅ローン控除が有利になるでしょう。

買換え特例

「特定居住用財産の買換え特例」は、所有期間10年超かつ居住期間10年以上の住宅を売却し、より高額な物件に買い換える場合に、譲渡所得税の課税を繰り延べられる制度です。

買換え特例は3,000万円控除とは併用できないため、どちらを選択するかは慎重に検討する必要があります。

一般的に譲渡益が3,000万円以下の場合は3,000万円控除を選択するのが有利です。なぜなら、3,000万円控除であれば譲渡益が非課税となるのに対し、買換え特例は将来の売却時に課税されるためです。

ただし、譲渡益が3,000万円を超える場合や、買い換え後の物件に長期居住する予定がある場合は、買換え特例のほうが有利になる可能性があります。

10年超所有軽減税率の特例とは併用が可能

「10年超所有軽減税率の特例」は、マイホームを10年以上所有して売却する場合に適用できる税制優遇制度です。通常の長期譲渡所得の税率20.315%に対し、譲渡所得6,000万円以下の部分については14.21%まで税率を軽減できます(税率は所得税と住民税の合計)。

10年超所有軽減税率の特例は3,000万円特別控除と併用でき、より大きな税の軽減効果を期待できます。例えば、譲渡所得が5,000万円の場合、まず3,000万円特別控除を適用して課税対象額を2,000万円に抑え、その金額に対して14.21%の軽減税率を適用できるのです。

ただし、適用には売却時点で所有期間が10年を超えていることが条件となります。

3,000万円控除の手続きに必要な書類

3,000万円控除の手続きに必要な書類は、以下のとおりです。

【3,000万円控除の手続きに必要な書類】

書類概要入手場所
確定申告書譲渡所得を申告するための基本となる書類税務署(国税庁ホームページ)
譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)【土地・建物用】売却価格や取得費、譲渡費用などを記載し、譲渡所得を計算するための明細書税務署(国税庁ホームページ)
戸籍の附票(写し可)譲渡契約締結日の前日に、住民票の住所と売却したマイホームの所在地が異なる場合に必要市区町村役所
売買契約書の写し所得税の計算に用いる本人保管
譲渡した建物や土地の全部事項証明書不動産の所在地、面積、権利関係などが記載された公的証明書法務局
本人確認書類(住民票の写しまたはマイナンバー)マイナンバーカードまたは番号確認書類と身元確認書類の組み合わせが必要市区町村役所など

3,000万円控除の手続きの流れ

3,000万円控除の適用を受けるには、必要書類を揃えて確定申告をする必要があります。申告時期は不動産を売却した翌年の2月16日から3月15日までの期間となります。

例えば、2024年にマンションを売却した場合、2025年2月17日から3月17日までが申告期間です。申告方法は、税務署への持参のほか、郵送やe-Taxによる電子申告も選択できます。

確定申告書の作成には国税庁のホームページにある「確定申告書等作成コーナー」が便利です。画面の指示に従って入力すれば税額が自動計算されるので、ミスの心配がありません。なお、控除を受けるためには、先述した書類の添付が必要となるため、早めの準備をおすすめします。

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不動産売却で利益が出た場合、適切な特例を選択すると大きな税の軽減効果を期待できます。特に3,000万円控除は、自宅売却時の重要な税制優遇制度です。ただし、適用要件や必要書類の準備、申告手続きなどを事前に調べておく必要があります。

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